にっぽん縦断 こころ旅・再び「トドワラの火野正平さん」

 NHK BSプレミアムで放送されている「にっぽん縦断 こころ旅」。俳優の火野正平が相棒の自転車、チャリオ君と一緒に日本全国を旅する番組だ。

 視聴者からの手紙を募り、手紙に書かれた“こころの風景”を訪ねる趣向である。

 この番組を観ていると、火野正平が主役だからこそ、みんなが観るんだなと思う。
 
 彼は、1949年5月生まれの65歳。立派に高齢者の仲間入りを果たしている。

 子役の時からテレビ、映画に出演してきた彼。若い頃から、女優や歌手、タレントなど数々の綺麗どころと浮名を流し、“女殺しの火野正平”との異名を取った彼。

 その彼も、今は、65歳。頭はつるっぱげだ。“女殺しの火野正平”だったことを懺悔しているうちに、つるっぱげに至ったわけだ。

 それにしても、人生とは、旅だ。いろいろなことがある。火野正平のつるっぱげ頭を観ていると、そう感じる。

 そんな火野正平が旅する「にっぽん縦断 こころ旅」だからこそ、人気番組として3年半近くも続いているのだ。

 誰にも人生における旅風景がある。他の人から観て、何の変哲もない風景でも、その人には懐かしい“こころの風景”である。そして、不思議なもので、それは、手紙に書かれた視聴者の気持ちや思い出を慮った瞬間、私たちにも“こころの風景”となる。

 それもこれも、役者、火野正平が番組の中で果たす役割の大きさに起因する。


 「にっぽん縦断 こころ旅」は、観ていて心に残るシーンばかりだ。が、そうした数多くあるシーンの中で私にとっての一番は、2012年7月20日に放送された北海道別海町の野付半島(のつけはんとう)を訪ねる旅である。

 この旅については、昨年、2013年7月24日付けで「トドワラの火野正平さん」と題してブログ記事を書いて投稿した。

 2012年7月20日放送の野付半島を訪ねる旅。これを火野正平に頼んだ方からの手紙には、書き出し部分で次のようなことが記載されている。

 私の「こころの風景」、それは、北海道の野付半島であること。
 
 それは、知床半島と根室半島の中間にあり、北方領土の国後島が16kmに迫る位置にあること。
 
 7年前に、野付半島近くの尾岱沼(おだいとう)ふれあいキャンプ場を拠点とし、半島入口から15km先にあるネイチャーセンターまでを走り、5歳の息子さんがちっちゃなちっちゃな自転車で伴走してくれたこと。

 そして、手紙は続く。

 「5歳の息子に、夏の野付半島は、さえぎる木々もなく、照りつける太陽で、さぞ大変だったと思います。けれど、泣き言も言わず、ハムスターのように、クルクル、ペダルを漕いで頑張っていた息子」

 15kmの距離を42歳の母親が走り、5歳の息子が必死に伴走している光景、ほほえましくもあり、頑張れ、と声援を送りたくなる。そういう楽しい思い出の地を“こころの風景”として訪ねてほしい、ということだなと理解する。

 しかし、手紙は続ける。

 「悲しいことに、その息子は、昨年10月に、11歳という年齢で、天国へ旅立ちました」
  
 なんということか。

 手紙は、更に続く。

 「ネイチャーセンターの先に、立ち枯れした『トドワラ』があり、そこがゴールです。ゴールした時の、満足そうな顔をした、息子の顔が忘れられません」

 そして、「息子が亡くなってまだ日も浅いため、辛くて行くことができないが、ふれあいキャンプ場から、野付半島を進み、ゴール地点の『トドワラ』を訪ねていただけたら、息子の供養になると思い、お手紙を送った」旨が綴られている。

 「トドワラ」とは、野付半島の海水と潮風の影響でトドマツが立ち枯れ、白骨化したようになった奇観をいう。

 霧と向かい風の中、火野正平は、お手紙に応えるため、尾岱沼ふれあいキャンプ場から野付半島のトドワラまでの25kmを自転車で走る。

 手紙の親子が7年前に走った時は、夏の照りつける太陽の下。そして、火野正平が走るのは、悪天候翌日の霧の中。

 7年の前と後の間に、息子さんが天国へ旅立たれた。
 
 野付半島のトドワラに向かう途中、火野正平は、愛車のチャリオ君を止める。

 そして、白い野の花を数本摘んで、自転車の荷台に結わえる。「息子さんにネ」とつぶやく。

 再び、霧の中を走り始めた火野正平の自転車姿をカメラが追う。荷台に結わえられた白い数本の花が風に揺れる。

 トドワラに着いた火野正平は、辺りをしばし散策し、つぶやく。

 「.....、トドワラに来たヨ......... 落ち着いたら、また来てやってネ」

 カメラの画面から火野正平が消える。立ち去った後に、白い数本の野の花。

 
 夏、真っ盛りの2014年7月27日。この日放送分の北海道南富良野町の金山湖を訪ねる旅を最後に、3月31日放送分から始まった2014年春の旅が終了した。

 火野正平はじめ、「にっぽん縦断 こころ旅」関係スタッフの皆さんのご苦労に拍手を送るとともに、やはり、2年前の夏を思い出した。「トドワラの火野正平さん」の心優しさが真に称賛に値することを。

 火野正平の心優しさは、観る者みんなの心を優しくしてくれる。

 人生の本質は、旅だ。いろいろなことがある。その中で、私たちは、生きていかなければならない。

 火野正平の心優しさに、あの手紙のお母さんは感謝し、そして、あの息子さんはきっと喜んでいるはずだ。白い数本の野の花が風に揺れて観える。 

 合掌。



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